パカパカ病に関する考察

※この記事は2007年に執筆したものに加筆修正を加えたものです。

はじめに

paka_image002カタナの中で一般に「III型」と呼ばれるカタナの最大の特徴は、ヘッドライトにリトラクタブル機構(自動格納式)を採用している点です。

2輪にこの機構が採用されているのは、このIII型カタナ以外にはHONDAのスペイシー125ストライカーだけです。
現在の道路交通法は2輪にヘッドライトの常時点灯を義務づけているので、今後この機構を採用した車両が製造されることまずないでしょう。

しかし、それゆえにIII型やその後期型であるIV型カタナ(以後総称して「III型」とします)には走行中などに突然リトラクタブルヘッドライトが開閉を繰り返すという、このバイク特有の電気的トラブルがあります。
それが俗に言う『パカパカ病』です。

余談ですが、同じリトラクタブルヘッドライトを採用しているマツダ ロードスター(NA)や、スペイシー125ストライカーでも同じようなトラブルが起こることがあると聞いています

パカパカ病の症状には…

  1. 走行中、または停車中に突然パカパカ動き始める。
  2. ヘッドライトスイッチをONにしても閉じたまま反応がない。
  3. 逆にヘッドライトスイッチをOFFにしてもライトが閉じない。

…などがありますが、昼間ならまだしも、夜間走行中に突然ライトが閉じることもあり、これはかなり危険です。
パカパカ病の症状は軽微なものから深刻なものまでいろいろありますが、全体に共通していることは『しばらく放置すると症状が治る』という点です。
もちろん、これは一時的なものでまたすぐに再発します。

その原因は正確にはまだ分かっていませんが、他のIII型カタナ関連の掲示板などでの報告によるとコントロールユニットの不良が原因である場合が多いようですが、中にはメインハーネスの劣化による通電不良が原因でこともあったそうです。

どちらに原因があるのかは個体差によるところが大きいので何とも言えませんが、パカパカ病の症状が出るときと出ないときがある場合はコントロールユニットの異常である可能性が高いと思われます。

個人的な見解では、コントロールユニットの異常の原因は、Webサイト「Internet GSX750S3 Club Web Site(現在は閉鎖)」の管理者BC松さんの仮説である「コントロールユニット内にあるコンデンサの寿命」が一番可能性が高く、また説得力があるように思います。

しかし、コントロールユニットは堅い樹脂の中に納められているので、未だその原因ははっきり分かりません。

 

パカパカ病の発症の原因

まず、パカパカ病の発症の原因について考察します。
…と偉そうなこと言っていますが、私は高校生程度の電気的知識がないので、ここは専門家に見てもらうことにしました。
パカパカ病を発症したIII型とIV型のコントロールユニットとリトラクタブルヘッドライト一式をT大学のとある研究室に持ち込み、パカパカ病の症状を伝えた上でどこに原因があるのか調査してもらいました。
その結果、故障の原因として考えられる仮説をたててもらいました。

(1) リレーの接点が経年劣化で不安定になった
某研究室の方がまず疑ったのがコントロールユニット内にあるリレーの不良でした。
実際、リレーの接点の摩耗でリレーが動作不良を起こすことは良くあることらしく、同じリトラクタブルヘッドライトを搭載する4輪車などでは、しばしばリレーの不良でライトが開閉しなくなることがあるようです。
そこでコントロールユニットに埋め込まれているリレーの仕様書を入手したうえで、この仕様書の通りなのか定格電力を印加して確認してみましたが、結果的にはすべて規定値内でリレー自体には問題ないことが分かりました。

(2) バイポーラトランジスタの温度変化による劣化
そして次に疑ったのがコントロールユニット内にあるバイポーラトランジスタの不良です。
回路図から判断して、ユニット内のトランジスタが何らかの原因で故障した場合、パカパカ病の症状を起こすことが予想できます。
トランジスタが壊れる原因は定格外電流を流した場合と、高熱にさらされた場合が考えられます。
バイクの場合、ヒューズやブレーカが内蔵されているので、普通の使い方をしていれば定格外電流が流れ込むことはあまり考えられません。
また、実際にコントロールユニットを見たことのある方は分かると思いますが、このユニット部が高温にさらされることはほとんどありません。
たとえ直射日光がフロントカウルに直接照射され続けたとしても、トランジスタが故障するまで内部温度が上昇することは考えられないので、やはりトランジスタが原因である可能性は低そうです。
【参考資料:ユニット内に搭載されているトランジスタの互換品2SC1815の仕様書

(3) コンデンサの劣化
最後はコンデンサの劣化です。
Webサイト「Internet GSX750S3 Club Web Site(現在は閉鎖)」の管理者BC松さんもこれが原因ではないかと疑っておりました。
通常、コンデンサの中でも電解コンデンサの劣化は最終的に開放モード(電圧をかけても充電されない状態)です。
しかし、電気に詳しい方なら回路図を見て分かるかもしれませんが、コンデンサ部が完全な開放になったとしても停車中にパカパカすることはありえません。

するといったい何が悪いのか…!?
実はこの「電解コンデンサ」が曲者で、故障として電解液漏れを起こす場合があるのです。
その液は導電性なので、予想外の場所が導通したり、カーボン抵抗器に吸われて化学反応を起こし抵抗値が増大する場合もあります。
その電解液のせいでバイポーラトランジスタのベース電圧が変動し、ベース電流値およびコレクタ電流値が変化して、リレーの動作に影響を与えた・・・ということが予想できます。

パカパカ病の症状が個体によって一定していないのは、この電解液の漏れ量と、それにより影響が及んだ素子にそれぞれ個体差があるためだと考えられます。

最終的な答えは未だにはっきりしませんが、この仮説が一番説得力があると思われます。

 

 

パカパカ病のメカニズム

パカパカ病の簡単なメカニズムについて説明します。
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ヘッドライトのスイッチをONにすると、その信号を受けてコントロールユニットは開閉モーターを始動させヘッドライトを開きます。

ヘッドライトスイッチをOFFにすると、また開閉モーターを始動させてヘットライトを閉じます。

ヘッドライトの開閉状態(現在どの位置にあるのか)はモーターに内蔵された位置センサにより判断できるようになっています。

ここでの特徴は、ヘッドライトが開くときと閉じるときではモーターの回転が同方向回転で、逆回転ではないという点です。
では、どうやって開閉を実現しているのかというと、ちょうどエンジンのピストンの様にクランク機構を使っているわけです。

つまり、開くときと閉じるときでは違う制御を行っているわけではなく、モーターの半回転でそれぞれ開閉を行っているのです。

  1. 開閉モーターの起動
  2. モーターが1/2回転したことを位置センサにより確認
  3. 開閉モーターの停止

このように、スイッチがOFFになったときも、スイッチがONになったときも、上記1~3の手順を繰り返します。

ですから何らかの理由でモーターが停止しなくなると、ヘッドライトの開閉が連続で起こるようになるのです。逆にモーターが始動しなくなるとヘッドライトが開閉しなくなります。 これが俗にいうパカパカ病だと考えられます。

pakapakaanime ・・・動かすとこんな感じです。

モーターが停止しなくなる原因は、

  1. コントロールユニットが故障した
  2. 位置センサの故障
  3. 位置センサ・モーター・コントロールユニットをつないでいる配線が断線している

・・等が考えられますが、上記2、3が原因である場合は、「症状が発現する場合としない場合がある」というパカパカ病の最大の特徴は現れないと思われます。

 

 

コントロールユニットの内部構造

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コントロールユニットを取り巻く配線図はだいたいこのようになっています。(サービスマニュアルから抜粋。この配線図はIV型(S4)用の配線図ですが、こちらのほうが単純なので採用しました)

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コントロールユニットはこんな形をしています。

先にも書いたように、内部は堅い樹脂でおおわれていて基板を見ることはできません。
ちなみに、板金塗装用のシンナーでも溶かすことはできませんでした。
彫刻刀などで傷をつけることはできますが、樹脂のみを取り去るのはかなり困難です。

ちなみにコントロールユニット内の回路図が見たい方は下記画像を参照してください。

HeadlightControllerV0401

 

位置センサの内部構造

ヘッドライトの開閉状態を検知するのは位置センサです。

コントロールユニットを設計するにあたり、このセンサの挙動がどうなっているか把握していないと設計できないので調べてみました。

image_5

実際には左上写真の位置に取り付けられていますが、見た感じでは簡単に分解できそうにありませんでした。
センサからは黄、青、緑の3本の線が出ていて、それらがコントロールユニットに続いていることからしてもこの線が信号を伝えているのに間違いなさそうです。(というか回路図でもそうなってる)

ヘッドライトの開・閉それぞれの状態の際の通電状況を調べてみたら、右上の表のようになりました。
緑→青、緑→黄の一方向にしか流れないのは、回路図にあるようにセンサ内にダイオードが内蔵されているためだと思われます。
回路図の絵では、まるでどちらかにしか通電しない切り替えスイッチに見えますが、どうやらそうでもないようです。
上の表とセンサの外見的形状から想像するに、センサ内の電極は上図のようになっていると思われます。
モーターの回転と連動してセンサ内の電極(図の黒色)が回るという感じです。

ちなみに、マツダ・ロードスター(NA)のリトラクタブルヘッドライトにも同じモーターが使われているという話ですので、流用することが可能かもしれませんが、以前そのパーツを入手したみたところ、形状はほぼ一緒であるものの配線コードの数が異なっているのでボルトオンという訳にはいかないようです。

なお、ロードスターの場合は右目用と左目用とがありますが、左右対称の形をしているのでどちらか片方は流用できません。

また、乗用車のワイパー(主に後部)にも同じタイプのモーターが使用されている場合があるようです。

 

 

III型とIV型の違い

III型とその後期型であるIV型には、外見的な違いの他に細かい部分で改善されている点があります。
たとえばIII型でよく亀裂が入るサイドカバーですが、IV型のサイドカバーは裏側が若干肉厚になっていたりします。(Ⅲ型のパーツでも、部品交換用に後期に製作されたバーツは同じように改善されているようです)

コントロールユニットも改善されている点の一つで、III型では

  • ヘッドライトが完全に開ききってから点灯

したのに対し、IV型の場合は

  • ヘッドライトが開くと同時に点灯

するようになっています。

III型の場合はヘッドライトの開閉機構とヘッドライトが電気的に連携しているので、開閉機構に故障があった場合、ヘッドライトも点灯しなくなります。

これに対して、IV型の場合は開閉機構とヘッドライトが電気的に独立しているので、開閉機構が壊れてもヘッドライトに影響はありません。

だからIV型の場合、開閉機構にトラブルがあっても、コントロールユニットを取り外して手動でライトを開けば普通に乗ることができ走行に影響ありませんが、III型の場合はコントロールユニットを外すと同時にヘッドライトも点灯しなくなります。

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サービスマニュアルに掲載されているコントロールユニットまわりの配線図を見比べてみても、III型の場合はコントロールユニットにのびる配線が1本多いことが分かります。(上図参照)

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実際のコントロールユニットを見比べても、IV型の端子が1本少なくなっています。(S3、S4はそれぞれIII型、IV型の意味です)
III型の配線を見るとヘッドライトのマイナス(アース)線がコントロールユニット内にのびていますが、これはヘッドライトが完全に開ききるまで電圧をかけておいてライトが点灯しないようにしているものと考えられます。
実際にやったことはありませんが、この線をどこかにアースすればIII型にもIV用のコントロールユニットが使用できるかもしれません。

 

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